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東京都世田谷区
住宅
「間取りを継承する暮らしの上書き」
マンションディベロッパーによる集合住宅には「DEN」と呼ばれる、多目的な小部屋が設けられることが多い。この住宅のDENは畳敷きの和室であり、祖母から暮らしを引き継いだ若い施主夫婦にとっては、時代に取り残された象徴のような場所だった。
今回の改修では、間取りの大きな変更を行わず、既存の間仕切り下地を再利用しながら、建具枠や仕上げといったディテールを更新することで、祖母の暮らしの記憶に現代のライフスタイルを重ねることを目指した。
間取り上の課題だったDENは、ワークルームとして再構築した。リビングの中にガラスボックスとして配置し、引き戸を開ければリビングの一部としてテーブルスペースに、閉じれば独立した小部屋となる。ライフスタイルや働き方に応じて空間の使い方を切り替えられる、柔軟な場となった。
採光・換気性能に関しても、引き戸の開閉により「2室1室扱い」とできることを確認申請機関と協議し、法的な適合を確認している。
ワークルームは、子育てをしながらコピーライターとして仕事を続ける施主にとって、日々の暮らしの基点となる場所である。内装は既存のクロスやボードを剥がして輪郭を整えた上で、砂入りのEP塗装で仕上げた。ざらりとした質感が光を柔らかく受け、陰影のある落ち着いた空間を生み出している。
家具や建具はラワン合板に赤系のオイルステインを施し、チープな素材感を刷新しながらエレガントな印象を与えた。建具枠もラワン合板製だが、見付・チリを最小限に抑えた高精度な施工により、一般的なマンションにはない緊張感のある納まりが実現した。
玄関から続く廊下では、既存のニッチを塞ぎ、施主の好みのモチーフで新たに開口を切り抜いた。黄色に塗装されたニッチにはお気に入りのオブジェが飾られ、廊下はギャラリーのような佇まいに生まれ変わった。
リビングは、ガラスのワークルームが際立つよう、アルミサッシの内側に木框戸を追加し、カーテンレールを埋め込みにするなど、余分な要素を極力排除している。クロスやアルミといった一般的なマンションの内装から、ラワン、塗装壁、ガラスといった豊かな素材感を持つ空間へと書き換えた。
ワークルームのガラスに映り込む家族の姿が、この家の風景を少しずつ更新していく。その変化を楽しみながら暮らしを育てていくことが、この改修のもう一つの目的である。
PROJECT DATA
所在地 東京都世田谷区
設計 太太 / 太田雄太郎
施工管理 コーケン / 平岡健太
資金計画 AROUND ARCHITECTURE / 佐竹雄太,安藤美香
主要用途・面積 住宅 80㎡
竣工年 2024年
写真撮影 浜田昌樹