Hiire

WORKSPROFILEMEDIACONTACT

08

静岡県伊東市

旅館

hiireという、全く新しい一棟貸しを設計した。

一棟貸しは、従来のホテルや旅館とは異なる、オーバーツーリズムを背景に生まれた新しいビルディングタイプであると考えている。

多くの一棟貸しではサービスは最小限に抑えられ、食事の提供も行われないことが多い。その代わりに、宿泊者自身が滞在を構築するための十分なキッチンスペースが用意されている。

hiireでは、この「食体験」に着目した。調理という労働的な機能と、ソファによる滞在機能を融合させることで、囲炉裏を現代に翻訳した大きなテーブルを空間の中心に据えている。

住宅的スケールを超えたこの振る舞いこそが、一棟貸しという新しいビルディングタイプにおける建築形式のひとつの提案である。

hiireは3棟でスタートした。将来的な展開を見据え、この建築群が伊豆高原にグループフォームとして新たな風景を生み出す可能性を前提に、設計チームは個別解ではなく、量産に耐えうるデザインルールの整備から着手した。

・1階の階高を抑え、2階の階高を上げることで風景へと開くシークエンスをつくる

・囲炉裏の場を2階に配置し、無柱で高天井の開放的な空間とする

・庇先端は最小厚の唐草とし、軒天とフラットに納める

・開口部にメリハリを与える

・外壁を基礎に被せ、地面から立ち上がるような印象をつくる

・色彩および建材を統一する

これらのシンプルで再現性の高いルールによって、オーダーメイドとレディメイドの中間に位置する建築を目指した。このルールは、設計チームの個性を活かしながらも属人性に依存しない、自律した建築群の成立を支えている。

一方で、各棟が単なるコピーとならないよう、アプローチと風景の関係に応じて平面構成を調整し、屋根形状も方形と切妻の2タイプを用意した。さらに、インテリアのカラースキームを個別に設定することで、同一ブランドの中にありながらも敷地条件に応答した固有の一棟として成立させている。 物価高と人手不足が進行する現代において、このような小さな建築群のあり方は、これからの社会に対するひとつの応答となり得るのではないだろうか。

(太田雄太郎)

PROJECT DATA

所在地 静岡県伊東市

設計監理 Studio Juggernaut + 太太 / 太田雄太郎,大塚友貴 + 横井智行建築設計事務所

構造設計監理 ASA / 鈴木啓,酒井裕太

施工管理 梅原建設

主要用途 旅館

竣工年 2026年

写真撮影 植村 崇史

NEXT PROJECT / WORK 01
丘庭
WORKS一覧へ戻る