Works / 02

OKANIWA
Architecture / Stay
Kiso
2026
場所をつくり、使いながら育てる。
長野県南木曽町田立の山中に、100円で取得した古民家がある。かつて著名なミュージシャンが所有していたとされ、特徴的なとんがり屋根が地域の風景の中に静かに残っていた。
設計・施工・運営を一体で行うチームが一期工事に着手したのは2024年2月のことだ。塗装などの最小限のDIYと一部開口部の交換だけで運営を始め、1年間の実際の使用を通じて空間の課題を洗い出した。その記録をもとに組み立てたのが、今回の二期工事である。サウナ、屋外デッキ、水廻り棟の増築が主な内容となる。
既存の丘庭は、約1000㎡の敷地に建つ50㎡ほどの母屋と、水廻りの別棟から構成されていた。二期工事では既存の水廻り棟をサウナに改修し、新たな水廻り棟を増築している。主屋の外壁には木曽檜の30角材を新たに張り、開口部を整理することで輪郭を抽象化した。増築された鉄のボリュームは、既存の木曽檜仕上げに対してあえて異素材とし、竣工年度のズレが外壁の風化として時間とともに現れるよう計画している。
設計の中心的な操作は、「とんがり」という形式の転用にある。地域の風景として立面的に機能していたとんがり屋根の形式を、平面へと展開した。サウナの開口、水廻り棟の平面構成、それぞれにとんがりの幾何学が介入することで、形式は本来の文脈を離れ、空間体験をつくる原理として機能し始める。既存の垂直性の強い空間に対し、増築棟は水平的なとんがりとして挿入される。
主屋と増築された水廻り棟は、ガラスのエキスパンションジョイントによって分節されている。構造的に独立しながら、光と視線は連続する。この細い隙間は幾何学・地形・時間のズレが交差する場所として、本計画の中心的なディテールとなっている。
設計・施工・運営を同一チームが担うことで、運営を通じて発見された課題が次の工事に直接フィードバックされる。建築が完成後に社会へ渡されるのではなく、使用と更新のサイクルが重なり合いながら継続していく。三期工事では畑とビオトープの整備、四期では新築棟の増築を計画している。宿泊による収益は地域の雇用を生み出すと同時に、和紙などの消えゆく技術の継承へと接続される。
建築は単体で完結するものではなく、時間とともに変化し続ける風景の一部として捉えられている。
Project credits
所在地:長野県南木曽町
設計監理:太太 / 太田雄太郎
構造監修:ASA / 鈴木啓
施工:山屋 / 山中亮 + 太太 / 中安原也,和田卓巳,大塚友貴,太田雄太郎
企画運営:太太 / 太田雄太郎,中安原也,和田卓巳
主要用途・面積:旅館・65㎡
竣工年:2026年
写真撮影:浜田昌樹





太太 / FUTOFUTO Tokyo / Kiso